関税法における輸入の3つのパターン
関税法における輸入は、以下のように定義されています。
「輸入」とは、外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては、保税地域を経て本邦に)引き取ることをいう。
条文を分解すると、ポイントが3つあることがわかります。
- 外国から本邦に到着した貨物
- 外国の船舶により公海で採捕された水産物
- 輸出の許可を受けた貨物を本邦に引き取ること
1の「外国から本邦に到着した貨物」は、一番なじみのある輸入のパターンですね。
外国にあった貨物が船舶や航空機で運ばれてくるパターンです。
2は、海で採れた水産物についての記載ですが、注意が必要です。「外国の船舶」によって採捕されている事と、「公海」で採捕されている事の2つの条件を満たした水産物を本邦に引き取る場合は輸入に該当するという意味になります。どこからが公海に該当するのかは、後述します。
3は、貨物が実際に日本の港を出ていなくても、輸出の許可を受けた(=外国の貨物に扱いが変わった)のであれば、それを再び引き取る行為は輸入に該当するという事を示しています。
公海と領海
どこからが公海なのかを知るためには、どこまでが領海なのかを知る必要があるのですが、その領域については、「海洋法に関する国際連合条約」という国際条約に基づいて、国内法である「領海及び接続水域に関する法律」によって定められています。
領海とは、海岸線から12海里(1海里は1852m)の範囲を指しています。
前述の「外国の船舶により公海で採捕された水産物」の公海とは、領海以外の海域を指しますので、接続水域を含む排他的経済水域もこの公海に該当し、そこで外国船舶が採捕した水産物を本邦に引き取る行為は輸入となるという事です。
(参考)…に規定する公海で採捕された水産物には、本邦の排他的経済水域の海域及び外国の排他的経済水域の海域で採捕された水産物を含むものとする。(関税法第2条第2項)
ちなみに、排他的経済水域は、領海基線(海岸線)から200海里までの海域で領海を除いた海域のことです。
参考 海上保安庁 管轄海域情報 日本の領海概念図
輸入とみなされる行為とみなされない行為
正式な輸入の手続きが完了しないうちに、外国貨物の状態のまま使用や消費をした場合はどうなりますでしょうか。
外国貨物が輸入される前に本邦において使用され、又は消費される場合(保税地域においてこの法律により認められたところに従つて外国貨物が使用され、又は消費される場合その他政令で定める場合を除く。)には、その使用し、又は消費する者がその使用又は消費の時に当該貨物を輸入するものとみなす。
この場合、「輸入とみなす」という扱いを受けることになります。
みなし輸入の例外
ただし、以下の4つの行為は、上記の例外として、輸入したとみなされません。
- 保税地域において関税法により認められたところに従って外国貨物が使用され、又は消費される場合
- 本邦と外国との間を往来する船舶又は航空機に積まれている外国貨物である船用品又は機用品を当該船舶又は航空機においてその本来の用途に従って使用し、又は消費する場合
- 旅客又は乗組員がその携帯品である外国貨物をその個人的な用途に供するため使用し、又は消費する場合
- 税関職員が採取した外国貨物の見本を当該貨物について検査のため使用し、若しくは消費する場合又は食品衛生法の臨検検査等や、植物防疫法の植物防疫官の権限による検査など、その他の法律の規定により権限のある公務員が収去した外国貨物をその権限に基づいて使用し、若しくは消費する場合
1は保税工場などの貨物使用の許可を得ている場所で、外国から仕入れた原材料を加工のために使用するケースなどが該当します。2はその船舶や航空機内で使用する燃料や飲食物などが該当します。3は乗客が手に持っていたお菓子などを食べる場合のことです。
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